アルツハイマー病治療開発の現状

日本においては2011年にドネペジルに加えて新たにコリンエステラーゼ阻害薬2剤とNMDA受容体拮抗薬1剤の計3剤がアルツハイマー型認知症の治療薬として用いられるようになりました。しかし欧米ではこれら4剤の登場から15年以上経ち、この間さまざまな新薬開発、特に病態機序に基づいた病態改善薬開発の努力が行われ、その中のいくつかの薬剤は最終段階の治験としてphase III段階までに達したものの最終的に有効性を証明できませんでした。


病態改善薬の開発現状

アルツハイマー病の病態機序は未だに完全に解明されたわけではありませんが、ベータアミロイドの異常蓄積を起点とし、タウ蛋白の異常蓄積、神経変性へと進展する、多段階の病的過程と考えられています(アミロイド仮説、認知症のなかのアルツハイマー病の項目を参照してください)。これらをもとに、病態改善薬としては、現在までアミロイドをターゲットとした治療研究が最も精力的に行われています。2021年6月にアメリカにおいてアミロイド抗体薬のaducanumabが認可されました。それに引き続いて複数のアミロイド抗体薬が開発されています。
 日本においても申請が行われましたが2021年12月に継続審査ということになりました。新たな研究データが提出されるまで、認可の決定が延期されました。これにより少なくとも4年程度認可の決定は遅れると考えられます。
 2023年1月6日にLecanemabが迅速承認でFDAに認可されました。しかしこれはあくまでも観察されたAβプラークの減少に基づき承認されたものです。臨床症状の改善による承認はまだ認められたわけではありません。(2023年1月15日)